恋する袖と恋愛の色②
「袖は愛のメッセンジャー」
中世ヨーロッパでも袖は雄弁なメッセンジャーでした。袖を取り外せる当時の衣装の仕立ては、流行という以上に汚れやすい部分だけ外して洗える点が衛生的でした。一着の衣装に付け替え用の複数の袖があつらえられたことで、愛情を保証する「袖を贈る儀式」が誕生します。
騎士たちは愛する女性から贈られた袖を槍(やり)や兜(かぶと)の先端、あるいは盾の裏に留めて戦闘や武芸試合に臨みました。聖バレンタインの日には、恋人たちは好意を寄せる異性の袖を身に着けたと言います。
袖は注文に応じてデザインされたので、その特徴により誰が恋人かを推測できたでしょう。恋い慕う異性の袖を着ける事は、愛情を周囲に知らせる事でもありました。