ムンクの虹色に輝く太陽‼︎
エドヴァルド・ムンク(1863~1944)の《太陽》(1909~16)は、オスロ大学講堂を装飾する壁画の1枚です。作品は自然の力と人間の知の調和をテーマにしており、講堂の正面に配置された《太陽》は、生命の源泉を象徴して圧倒的な存在感を放っています。
ムンクが太陽を虹色の放射光で彩り、子供が大切なものを描くように画面の中心へ据えました。
海に浮かぶ小島や岩浜に陽光が差し、色彩は明るく響き合い、新しい世界への喜びに溢れています。フィヨルドの海岸に昇る太陽は、豊饒(ほうじょう)をもたらす永遠の存在として、ムンクにはまさに世界そのものだったのでしょう。
ムンクは5歳の時に母を、思春期に姉を、ともに結核で喪いました。相次ぐ家族の死に加え、亡き母が手紙のなかで「青白いエドヴァルド」と呼んだ自身の病弱さ、スペイン風邪で生死の境をさまよった経験から、常に生命への不安を抱えていました。
不安と孤独に苛まれて精神障害を患ったムンクでしたが、太陽に惹かれ自然に目を向けることで回復していきます。ムンクの死後、友人たちは資金を出し合い《太陽》の風景が失われぬよう計らいました。