世界遺産「和食」の美意識と色 ①
「和食」が無形文化遺産として登録されたのは2013年のことです。その特徴となるキーワードは「自然の尊重」でした。
和食が評価されたのは、新鮮で多彩な食材と持ち味を尊重し、それにより栄養バランスに優れた健康的な食生活となること、加えて自然の美しさや季節の移ろいが表現されていることにあります。
また和食は、正月をはじめとする年中行事や地域生活との密接な関わりがあり、家族や地域の絆を強化するものである、という意義も併せてもちます。
無形文化遺産としての「和食」はおおむね京料理を枠組みとする「日本料理」を指すようですが、海外で「和食」といえば「寿司、天ぷら、すき焼き」が著名で、「たこ焼き」が人気であることも興味深いところです。
いずれにしろ和食は、会席の料理から家庭で食す卵かけご飯まで幅広く、また出汁や調味料にも特徴を持つ奥深い料理なのです。
(和食の基本は一汁三菜)
京料理は、平安京の公家たちの典型的な宴会「大饗宴」に起源します。ここで食卓の大皿に盛られたのは食材そのもので、調味料はあとから付けて食していました。対して庶民は「一汁三菜」の膳で、これが千年以上続く日本料理の基本形です。
板切れ一枚であった膳は次第に脚がつき装飾が施され、武家の饗宴料理である「本膳料理」へと発展します。
昭和30年くらいまで、結婚式など祝いの膳は料理をのせ銘々膳を並べる形の本膳料理で、これが正統な日本料理でした。
本膳料理の調味料は精進料理から発展します。宗教的タブーに規制されながらも、素材を生かした豆腐料理や小麦を使った麺料理、また「雁もどき」のように魚肉の味や姿を思わせる野菜料理など、禅僧の工夫が和食を磨き、同時に作法も生みました。