恋愛感情が袖を通して伝えられ、その関係が公にされた時代がありました。万葉集の恋の歌には、袖、衣手を詠んだものが数多く残されています。
代表的な歌は、額田王(ぬかたのおおきみ)の「茜指す紫野行き野守は見ずや君が袖振る」でしょう。
夫ある身の彼女に対して大胆にも袖を振ったのは、かつての恋人大海人皇子(おおあまのおうじ)でした。
袖は衣服のなかでも表情豊かな部位であるため、身に着けている人自身と等価と考えられたのかもしれません。
袖触れて、袖交わす、袖返す、袖の別れ、、恋心は、袖に込めて交わされました。