えびちゃ[海老茶]色の話
暗い赤紫色の古来の伝統色名は葡萄色(えびちゃいろ)だったのだが、近世になると人々のこの色からの連想は、山葡萄の色ではなく伊勢海老の殻の色になってしまった。
そして葡萄色は海老色に変わったのである。葡萄の古名である「えび」が忘れられ、えびといえばとっさに思いつくのが海老になったというしだいである。
この色は、文明開化の時代は女学生の袴の色になっていたので、新時代の学問をする女性に紫式部をもじって海老茶式部のあだ名ができた。
「海老茶式部やがて灰色式部なり」「海老茶式部赤新聞の種なり」という川柳は、当時の女学生を茶化したもの。
また、この色名は尾崎紅葉などの明治以後の作家の小説によく知られている。つまり、この色名の歴史はごく新しいといえるだろう。