黄丹(おうに)色のお話
以前、「黄櫨染」のお話をしましたので、今回は「黄丹」のお話を致します。
古来、宮廷で着用された朝服を袍(ほう)という。和名で表衣(うえのぎぬ)。皇太子専用の袍を黄丹の衣(きぬ)といって、黄丹はその袍の染色の色名である。
黄丹とは、黄と赤の両方の色合いをもつ色のことで「おうたん」とも読む。オレンジ色である。黄丹は天皇の黄櫨染(こうろぜん)の袍に次ぐ禁色であった。「延喜式」によれば、この色は紅花と支子(くちなし)で染色されることになっている。
ところが支子染を濃く染めると黄丹にまぎらわしくなるので、濃い支子染が禁制されることになったのだが、それでも支子染愛用の風がすたれなかったので、元慶5年(881年)には、茜や紅を支子と混ぜて用いた染色は濃くてもすべて禁止するという宣旨(せんじ)が出された。
しかしそれでも黄朽葉(きくちば)などと名前を変えて着用されたという。現在も皇太子の式服として昔のまま用いられる。