世界遺産「和食」の美意識と色②

「もてなしの食文化」

日本料理に美意識の柱を成立させたのは千利休で、一汁三菜を基本とした「懐石」(修行僧が空腹を防ぐために懐に温めた石を入れたことを由来とする質素な食事)の料理を練り上げ、道具の趣向すべてに絶対的な「詫び」の世界を目指しました。

和室や茶室は明度と彩度を抑えた「色を見るための色」すなわち「捨て色」で造られ、その中で利休は楽茶碗の赤と黒に抹茶の緑色を対比させたのです。

利休の精神は「利休色」として「利休鼠、利休茶、利休白茶」などの色名に今も残ります。

高級なイメージのある「江戸前寿司」は、かつて江戸では蕎麦屋より多い屋台のファストフードでした。

しかし今では和食の集大成ともいわれる洗練された日本料理の代表的存在です。

その寿司に欠かせない醤油は「むらさき」と呼ばれますが、これは味噌から生まれ、その貴重さゆえに、また昔は赤褐色を紫といったことも由縁します。

客人をもてなそうとするさまざまな心遣いや工夫はもちろんのこと、白米を「銀舎利(菩薩)」とも呼び、一粒の米にも感謝する倫理観や、美しい箸使いなどの作法も含めて「和食」は世界に誇れる文化といえましょう。

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