ヒッチコック映画「マーニー」の赤

「色で記憶がよみがえる」

「マドレーヌのかけらをひたしたお茶が口のうらに触れた瞬間、私は自分の身に変わったことが起きているのに気付き身震いした。、、、いまや(子ども時代を過ごした村)コンプレーの全てが、しっかりした形をとって私のお茶のカップから飛び出してきたのだ」

これはプルーストの小説「失われた時を求めて」の中に出てくる有名な一節です。五感のどこかが何らかの刺激を受けた瞬間、無意識の奥に眠っていた記憶がアウトプットされ自分の心に大きな変化が起きてしまう。この小説の主人公は、紅茶の味と香りから子ども時代の幸せだった日々を圧倒的な感情とともに思い出していきます。

味や香りに限らず、人は色彩の刺激によっても眠っていた記憶が目覚めることがあります。色彩によって過去の苦しい記憶から解放される人間を描いたのが、ヒッチコック映画「マーニー」です。

主人公マーニーは、何故か「赤い色」を見ると、失神したり混乱したり、心理的な発作に苦しむ女性です。潜在意識の中に刻まれていたある記憶がよみがえろうとする。ところが、意識がそれを抑えこもうとする。その葛藤の激しさから発作が起きるのです。度重なる発作の異様さに何かを感じ、なんとかマーニーを救おうとするのがショーン・コネリー扮する夫のマーク。

何故、赤い色なのか。妻は赤という色によって何か古い記憶が刺激されている。そのために1人苦しんでいるのではないか、、、。苦しみを解決するためには、隠された記憶の謎を思い出させる必要がある。その原因は妻の子ども時代にあるのかもしれない。そう考えた夫は、嫌がる妻を連れてその母親に会いに行くのです。

重い口を開いた母親が語った母と娘の歴史。それは恐ろしく悲しいものでした。貧しい生活の中で1人で娘を育てていた母親は売春で身を立てていました。そんなある日、母に乱暴をしようとした男に、幼いマーニーは鉄の火かき棒を持って立ち向かう。やがて男は真っ赤な血を流して死んでしまうのです。その赤い色を見た途端、マーニーは事件の記憶を失ってしまう。

母親からその過去の事実を聞き出しながら、マーニーは突然幼女に戻ったかのような声で泣き叫ぶ。事件が起きた時の心理的な年齢に退行してしまったのだ。やがて、マーニーは無意識の中の苦痛の原因を理解しトラウマから解放される。

映画は主人公が落ち着きを取り戻し、晴れやかな表情で夫と抱き合うところで終わります。赤はマーニーが苦しい記憶をアウトプットしようとして出していた意識下のサインだったのです。

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