紫〜高貴と情愛の色。

一言で「紫」といっても、日本人がこの色に託すイメージは幅広い。例えば、歌舞伎の世界では紫色は「ヤマイハチマキ」として病人の頭に巻かれる小道具でもある。

一方、この色は古代から高貴を象徴する色として、権力階級の衣服や神社仏閣の垂れ幕などに使われてきた。実際、聖徳太子が律令制度を確立した際、位によって冠や衣の色を定めた官位十二階の制度では、紫を高位の色とした。それ以来、紫は常に最高権威の象徴として喜ばれてきた。

さらに平安時代、王朝貴族たちは紫色に特別な意味を持たせた。紫色は「ゆかり色」とも呼ばれ、ことのほか重んじられたようだ。その事を詠った歌が古今和歌集にもみられる。

「紫のひともとゆえに武蔵野の草はみながらあわれぞと見る」(恋しい人を一本の紫草になぞらえ、それに繋がる全ての縁を武蔵野の草にたとえて、人の世の繋がりと縁の大切さを詠んだもの)とある。

このような紫草への比喩から、紫色を「ゆかり色」あるいは「ゆかりの色」とも呼び、運命的な縁で情愛が生じる関係を「紫のゆかり」と表現するようになったらしい。

紫は、赤でもなければ青でもない、双方の性質を併せ持つ微妙な色。熱い色と冷たい色が融合した、喜びと悲しみを同時に映し出すような不思議な色といったらいいだろうか。平安人が「ゆかりの色」と呼んだのもわかるような気がする。

相容れないはずの対比的な色が溶け合った紫色は、切ない情愛に揺れる心理状態を暗示するのにぴったりの色といえるからだ。

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