子どもは色と形のどちらを先に記憶するか?
人間の脳細胞は、1個につき50ほどの神経線維を持ち、他の細胞とつながって複雑な回路を作っているが、子どもが3歳に達するまでには、大人の70~80%の回路が出来上がるといわれている。
「三つ子の魂百まで」とはよくいったもので、子どもはこの時期までに、人間としての基礎が出来上がるといわれている。とはいえ、大人と全く同じように物事を捉えているかと言うと、そうでもないようだ。
例えば、この時期の脳は、色と形に対する概念が、それぞれ独立して発達するのである。心理学者D・カッツの実験によれば、幼児に赤い円盤を見せて「これと同じものを選びなさい」といったところ、子どもは緑や黄色の円盤ではなく、赤い三角形、赤の四角形を選んだ。
つまり、子どもの発達過程では、形より色が優先するのである。そういえば、あるお母さんから「うちの子は、2歳ですが、お絵かきするときに赤やピンクのクレヨンばかり使うのですが、、」という話を聞いたことがある。
色が識別出来ていないのか、と心配しているようだったが、眼科検診で異常が見られなければ、気にしなくてもいいと思う。その子どもにとって、赤やピンクがお気に入りの色なのだ。
幼児期には、黄色、白を筆頭に、暖色系を好む傾向がある。2~3歳くらいの子どもは、木々を赤で描いたり、りんごをピンクで塗ったりすることもあるが、成長するにつれて、形と色とを統合して認識できるようになる。放っておいても、木々は緑に、りんごは赤や黄色に塗るようになっていく。
むしろ、脳が十分に発達していないうちから「この色で描いてはダメ」「この形には、この色を使うべきだ」と強制するのは、かえって伸びやかな絵を描く喜びを摘み取ってしまうことになりかねない。