日本の色🇯🇵①
真っ赤な紅葉に秋を感じ、純白の雪をもって冬を象徴させる日本人は古来より四季の移り変わりを、身の周りの色彩の微妙な変化に感じ取ってきました。その例を具体的に上げるまでもなく、日本人が世界でも最もデリケートな季節感を持ち、優れた色彩感覚を持った国民であることは疑いないでしょう。
春の盛りに咲く桜を愛するのも、花の姿の華やかさや散り際の潔さとともに、日本人が桜の花びらのわずかに紅を含んだ白さに、微妙な色彩美を感じ取っているからに違いない。それは平安時代以来、落ち葉にさえ、一枚一枚の彩りの違いを見出し「朽葉」「黄朽葉」「青朽葉」などと呼び分けていたことからも伺えることは出来るでしょう。また、それは植物に限らず、虫や鳥の羽の色にさえ色の美しさを発見している事からも分かります。
単に一つ一つの色を鑑賞し、生活に取り込むだけでなく、それらを組み合わせて衣服の上に多様な美をもたらしてきたのも、また日本人である。それは例えば、平安時代の貴族のあわせ仕立てされた衣服の表地と裏地の配色に典型的に見られる。これらは「重ね色目」と呼ばれ、現在知られているだけでも120種にも及び、その配色が多様であるだけでなく、それらが季節に応じて使い分けられていた点に、自然と一体となったこの時代の貴族の生活感が伺えます。